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 同棲して分かったことがある。  一緒に時を過ごすのに必要なのは、距離の近さじゃなくて、時を重ねるためのお互いの努力だということ。  同棲すれば嫌でも飽きられるくらい顔を突き合わせることになると思っていた。 予想と違う。今週、どれくらい尚人と話せた? 朝食はいつもバタバタで「おはよう」と朝のキスが精一杯。夕飯は、三回も一人で食べた! 仕事を終え、食材の詰まったマイバッグを引きずるように帰宅して、料理の途中で電話がかかってくる。 「ごめん、外食することになった」「夕飯、支度してた?」「ううん。これから」「悪い、先に寝てもらって構わないから」「気にしないでください。ありがとう、連絡くれて」「ほんと、悪い」 この一連の会話を三回も! そして、一人で寝る。 朝起きて、寝ぼけ眼の目を擦ると尚人の寝顔が横にあるから(あぁ、帰ってきたんだ)……って、全然想像していた同棲生活は違うのだ。 こう、もっと……歯が痛くなるくらい甘々で、箸の上げ下ろしの合間にもイチャイチャで、うれしはずかし……っていうか、期待しすぎて臆病になっていた自分が痛すぎる。 (これじゃ、一人暮らしの時の方がよかった)
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