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なんて、うっかり思う時すらあるくらい……。 同棲する前の方がお互い休みのたびに会っていた。尚人も忙しいながら、なんやかやと都合をつけてくれていたように思う。 今週、尚人の腕の中に収まった夜を数えてゆかりは思わずため息を吐いた。  同じ屋根の下に住んでいるだけ、体を重ねるだけ。同じように朝が来て、同じように夜が来る。ただそれだけ。  夏の夜は暮れるのが遅い。 マンションへの帰り道、買い物がてら通り抜ける商店街は金曜で休みを次に控えているせいかいつもより歩く人の顔が華やいで見えた。 これから飲みに行く様子のサラリーマン。人待ち顔で立っているスーツ姿の女性。大学生らしきグループが肩をぶつけ合い笑い声を上げながらながら歩いている。 昨日買った食材がまだ残っているから、今日は買い出しはいらないかな、あ、でもトイレットペーパーは買って行かないと……なんて、結婚前にしてすでに所帯染みている自分のことが悲しくなってくる。 どこかはしゃいだ街の空気の中を突っ切って帰らなきゃいけないってことが。 ——あぁ、なんなんだろ。 体を重ねるだけじゃなくて、もっと、なんていうか、もっと。
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