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「温泉とか、良くない?」 「あー、いい。最近は部屋にお風呂が付いてたりするところがあるんでしょ。二人っきりで温泉、最高じゃない」  最高かも……。 「あ、長野に流星を見られる旅館があるって」 「素敵—」 「長野じゃ近くない? 私はもっと遠い方が良いなあ。いっそのこと、海外とかさ……」  彼女たちが行ってしまってから、吸い寄せられるようにカタログの前に立ったゆかりは、そのうちの一枚をじっと見、バッグの中に丁寧にしまった。 「旅行?」  ご飯茶碗片手にかすかに首を傾げた尚人の顔から目をそらさないように意識して、ゆかりは答えた。 「はい。尚人さんがお盆休みを取れるなら、ぜひ一緒に行きたくて……」  だって、意識しないと尚人ではなくて、今彼が来ているひらひらフリルのついたエプロンの方を凝視してしまいそうになる。  今話題にしたいのはそっちの方じゃないのに。  帰宅したら、玄関が開く音に気づいた尚人に出迎えられて(エプロン着用済み)、手を引かれるままリビングに入ると夕食がテーブルに並んでいた。  夢みたい。 「美味しい?」 「美味しいです。このひじきの煮付け、すごく味がいい」
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