7/7
128人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
と、ゆかりが自分の目の高さにあげた右手人差し指は、見事に包帯でぐるぐる巻き、その指だけフランクフルトのような見た目になっている。 「……お風呂が困ります」 と、包帯を解こうとすると、 「風呂は一緒に入ればいい。体も、髪を洗うのも俺に任せろ」 と、手首をつかまれてしまった。  尚人の視線に射抜かれて、ゆかりが断れるわけがない。  それから、お風呂から出るまでに、ゆかりがすっかりのぼせあがってしまったのは、湯加減のせいばかりではなく……。 尚人の甲斐甲斐しさは抜群で、よろよろのゆかりをベッドまで運び、水の入ったコップまで持ってきてくれる。  やっぱり、夢かもしれない、とゆかりはどこかで思う。 「ありがとうございます。手間かけちゃって……」 「いや、気にするなよ」 と、二人して頬を染め見つめ合うことしばし、 「それにしても、君から旅行に誘ってくれるなんて、どうした」 と、尚人が聞いてきた。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!