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と、ゆかりが自分の目の高さにあげた右手人差し指は、見事に包帯でぐるぐる巻き、その指だけフランクフルトのような見た目になっている。
「……お風呂が困ります」
と、包帯を解こうとすると、
「風呂は一緒に入ればいい。体も、髪を洗うのも俺に任せろ」
と、手首をつかまれてしまった。
尚人の視線に射抜かれて、ゆかりが断れるわけがない。
それから、お風呂から出るまでに、ゆかりがすっかりのぼせあがってしまったのは、湯加減のせいばかりではなく……。
尚人の甲斐甲斐しさは抜群で、よろよろのゆかりをベッドまで運び、水の入ったコップまで持ってきてくれる。
やっぱり、夢かもしれない、とゆかりはどこかで思う。
「ありがとうございます。手間かけちゃって……」
「いや、気にするなよ」
と、二人して頬を染め見つめ合うことしばし、
「それにしても、君から旅行に誘ってくれるなんて、どうした」
と、尚人が聞いてきた。
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