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「いいね。でも、俺はどうせ行くなら施設やサービスが整ったホテルの方が良いと思う。ここだとサービスにそう期待するわけにいかないだろ?」
せっかく行くのなら君にゆっくり寛いでもらいたいから、と言われて、ゆかりはゆっくりと首を縦に動かした。
「俺もちょうど、今度取れるまとまった休みには、ゆかりとどこかへ行って、ゆっくりしたいと思っていたんだ。行く先は、そうだな……、もう少し考えてみないか?」
ずるずると気持ちが滑り落ちていくのを感じて、ゆかりはうつむいたまま動けない。
別に、旅行について否定されたわけじゃない。
むしろ前向きに考えてくれると言われた。
なのに、なんでだろう。
泣きたくなる。
「そ、そう、ですよね……」
尚人が指摘した、施設がこじんまりしている、接客はプロというほどではない……というのが、ゆかりのお気に入りポイントだったのだ。
そのほうがずっと自分の性にあっている。
そもそも、お高価いホテルに泊まってゆっくり落ち着けるほど肝が太くはない。
ホテルの受付ロビーに入っただけでびくついてしまいそう。
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