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それがゆかりの〈前科〉。  もし尚人が偶然ゆかりのバイト先に来なければ……あ、今は社員にしてもらっている……あのまま別れたきりだったかもしれない。 今思えば、恐ろしいことをしてしまった。 不意打ちの再会、抱きしめられた時に、結局自分は尚人のぬくもりを欲していたのだと、突き抜けるような理解に全身が震えた。 どうしよう。このひとが欲しい。 生きている、私の方が。 死んでしまったあなたより、近くにいる。 ごめんなさい。 うれしい。 後になって、小夜子や元カノの一美さんにまで尚人がゆかりの居場所を聞いて回っていたと聞かされて驚いたものだ。 尚人はいつの間にかゆかりの交友関係を把握していた。 それだけ必死に探してくれていた。 ゆかりは泣いた。自分を探し当ててくれた尚人からもう離れまいと誓った。 「……小夜子さんから君が実家に戻っていないことは聞いていたからね。実家に帰らず一人暮らしをしているなら、仕事をしているはずだ」 「ご、ご明察でした」 とゆかりは首をすくめるしかない。  それにしても、喫茶店で話すにしてはやや重め話題だ。 「も、もしかして課長、私に意地悪してます?」
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