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 おずおず聞いたら、 「君はすでに会社を辞めたんだから俺のことを課長と呼ぶ必要はない」 と、きっぱり返されてしまった。  同時にスッと胸に差し込んでくる尚人の視線にブワッと全身の毛穴から汗が吹き出してくる。 「な、ななな……尚人さん」  下の名前で呼んだら、まさに破顔って感じで。そんな表情見せられたらキュッとお腹の奥が熱くなるから、ゆかりはますます困ってしまう。  今自分の顔はどんなことになっているのか。我慢できずにテーブルに突っ伏すと、コーヒーカップがガクンと揺れた。咄嗟に尚人が自分のも含めてカップをソーサーごと持ち上げてくれたのでコーヒーをこぼさずに済んだ。 「ハハハ」 「もうっ、からかってますよね!?」  バッと顔をあげ抗議すると、鼻先が擦れるほどの距離に顔を近づけてきた尚人に、 「そのうち、その敬語も取っ払って欲しいな」 と甘いひびきで囁かれる。 ——〜〜〜!! ふと自分たちの座るテーブル席の向こう、カウンターの奥を見ると、アルバイトの京子と目があった。洗い終わったカップを飾り棚に戻そうとしていたよう……腰をひねって上半身だけこちらに向けた姿勢がやや不自然だけど。
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