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8
「もう、叔父の屋敷はないのだけど……」
そう言いながら加代に教えてもらった屋敷の跡地は道路になっていた。
すっかり風景が変わってしまって、五十年以上前の土地の面影は全くない。
(やっぱり……不可能かも……)
通された部屋の窓を開けて外を眺めたゆかりは下唇を噛み締める。
土地の人間でもないゆかりがどうやってその場所を探し当てられるというのか。
「安請け合い、しちゃった……」
せめて、似たような光景を見られる場所を探してみようか。星は、どこからだって見られるはず。大事なのは、あの花だ。加代が大事にしているあの詩織に描かれていた白い花。
一面に広がって、といっていた。ということは群生しているのだろう。ポツポツ咲かれるよりずっといい。群生なら人目に付く。それなら見つけられるかもしれない。
時間をかければ。
「でも、なぁ」
スマホを手にゆかりは反対の手で頬に手を添えため息をついた。
ただの旅行者のゆかりには時間は限られている。加代だって、ずっとこの旅館に泊まっていられるわけではない。
さっき検索してみた。ペルセウス座流星群のピークは明日。明日の夜までにその場所を探さなければ。
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