第一話 第三章

1/22
前へ
/69ページ
次へ

第一話 第三章

 ───喫茶店に店長を一人残し、二人は連れ立って歩く。  小夜さんの案内の下、喫茶店が建っている休憩所の先へと進む。  此方側に来るのは本当に初めてになる。  住んで居ても地元で行った事の無い場所は結構あったりすものだ。  やがて林道モドキを抜けて、本格的な歩道に出た辺りで。 「何だか巻き込んでしまってごめんなさい。  とても喫茶店の店員さんがする事じゃないわよね。」  隣を歩く女性。依頼主の小夜さんが、  困った様な笑顔と共に謝罪の言葉を口にする。 「あー…。いえ、その分はしっかり店長から貰いますから。  だから気にしないでください。」 「まあ。しっかり者ね。」  そう話しては“クスリ”と笑う小夜さん。  大人の人でもこんな風に笑うんだと思う一方で、  何処かそれが様に成っているとも思えた。  これがよく聞く大人の魅力と言うやつだろうか?  小夜さんは小さく笑うと。 「それにしたって普通は断りそうなものなのに。  何かあの人に弱みでも握られてるの?」 「だったらもっと素直ですよ。」  冗談めかしに話す小夜さんに釣られ、自分も同じ様に応える。  でも、僕は内心であのお茶の所為です。とも考えていた。     
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加