第一話 第二章

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 それ真似てみる。えっと後は何か言う事は……。 「現在テーブル席とカウンター席が空いていますが、  どちらかご希望はございますか?」 「一人だし、それじゃあカウンター席をお願い。」 「畏まりました。それではお席へご案内いたします。」  女性客をカウンター席の真ん中らへんに案内して、席に座るのを見届けた後。  僕はカウンターの向こう側へ周り急いで手を洗い、  お絞りを取り出しては女性の前へ静かに置く。  女性客は小さく会釈してはお絞りで手を拭いている。  今。僕に一時の平穏が訪れた。さて、此処までは何とか騙し騙しこなしてしまったが、  此処から先はどうしよう。店の主であるマスターがまだ来ていないのに  客を入れてしまった。今からマスターが居ない事を説明して帰ってもらう?  それは最初に言うべきだった事で、既に席へ案内してお絞りまで出してしまった今。  非常に困った事に、今更『帰ってください。』は言い出し辛い。  ああ、どうし─── 「店員さん。」 「はい。」 「注文を良いかしら?」 「は、い。」 「日本茶を一つ頂ける?  出来れば温めでお願いしたいのだけれど……。」 「温めですね? 畏まりました。」 「ふふ、お願いね。」     
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