第一話 第二章

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 やがて高まり過ぎた緊張感が高揚感へと何故のすり替わりを起こす。不味い、変な笑みが零れそう。  笑っちゃ駄目だと必死に自分を抑えていると。 「~♪~♪」  鼻歌らしき物が僕の耳に聞こえてくる。  それが一体何時から歌われていたのかは分からないけど、歌っている人は分かる。  この店唯一のお客さんからだ。チラリと見るば、  柔らかく笑いながら、聞いた事も無い鼻歌を歌って。女性客は僕の方を見詰めていた。  人の良さそうなお客さん。でも今はその感想と視線が僕には痛いほどに刺さる。  嫌な感じに自分の首周りが湿るのを感じ、思わず女性客から視線を外す。 「んふふ。」  すると視線の外から女性客の小さな笑いが漏れ聞こえた。  何か可笑しかったかな? そう思った時、火に掛けたケトルが湧いたと気が付く。  僕はどうでもいい疑問を掻き消して。ケトルの湯を茶漉しの乗った急須へと注ぐ。  急須に蓋をして中を少し蒸らしたら、用意して置いた湯呑へ急須の中身を注ぐと、  湯呑に琥珀色の液体が満ちて往く。辺りには何だか香ばしい匂いが漂い始めていた。  これは良く出来たのでは? と言う感傷に耽る間もなく。  カウンター下から綺麗なミニタオルを取り出し、冷水に潜らせ、  それを湯呑の下半身に軽く回し付ける。茶を入れるのに湯を温くは出来ないので、     
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