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今はもう注文をこなした後だし、普通に店長は不在だと答えれば良いだけだ。
それで怒られる事はまず無いだろう。そう思い、若干安堵しながら。
「すみません店長は今───」
「此処に居ます!」
「!?」
お客さんに店長の不在を伝えようとすると、店内にその不在の店長の声が響く。
慌てて辺りを見渡して見るも店長の姿は見えない。だけど別の事に気が付いた。
それは、女性客が慌てた様子も驚いた様子も見せずに、何故か店内の一点を見詰めている事。
見詰めていたのは祠が建っている右側の壁。何も無いはずの壁。
“何故其処を?”と言った僕の疑問は直ぐに消える。何故なら
その何もないはずの壁が横へとスライドし。
「おはようございます。バイト君のピンチを感じて助けに来ました。
後店長では無くマスターと呼んでくださいね、その方が格好良いから。」
等と言いながら、スライドした壁の向こうから現れたのは。
髪を後ろで縛り止め、袖を肘の辺りまで腕まくりした白色のブラウスに。
スキニージーンズ姿の女性で。
これでもかと自信満々の表情を浮かべたその人は紛れもなくこの喫茶店の───
「店長!」
「ふふ、マスターですよ。マスター。」
「マスター!」
呼ばれて満足げなマスター。店の中にある隠し扉はこの際どうでも良い。
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