第一話 第一章

3/14
前へ
/69ページ
次へ
 僕の言葉に友人は“ぶーぶー”と何かを一頻り喚くと。 「ってよー。お前友達が俺しかいないだろ?  だから夏休みを楽しく過ごせねーのが申し訳なくてよ……。」  もの凄く失礼な事を言いながら彼は僕に謝る。  ……実際友達と呼べるのは彼だけだ。  でもそれで僕は構わないし、別段友達を増やしたい訳でも無い。  夏休みは家でのんびり過ごせればそれで十分だ。  だから“別に君と一緒じゃなくとも僕は夏休みを楽しく過ごせる。”そう言おうとしたが。 「そうだ! お前も夏休み中にバイトしてみたらどうよ!」 「どうよって……。」 「ぜってー楽しいって! なぁ!」  友人は最高のアイディアだと思ったのだろう。  それから彼は駅に着くまでずっと、『素敵な出会いが~。』とか『人夏の過ち~』  だかがどうのと、やたらと高いテンションのままで僕にバイトを勧めてきては。 『姉が突然ダンスにハマりだした。』だの『バイクが楽しみ。』なんて、  夏休みへの楽しみを爆発させて話し続ける。  僕はそれを生返事で躱し続け、遂にゴールへ到着した。  其処は小さな駅。特急などで素通りされて仕舞う程度には小さな駅で、  今の僕には用の無い場所。  駅に付いた友人は財布を尻ポケットから取り出し。改札口へと向かう。     
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加