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一人心の中で思いを渦巻かせていると、隣の女性客がそう声を掛けて来て。
「実はこの近くに深見って婦人が一人住んでいらしてね。
結構なお年のその人が、大掃除をするって仰言っていて。
出来れば私がお手伝いしたいと思ったのだけど、
生憎どうしても抜けられない仕事の所為で、それが無理そうなの。
だから代わりに貸しのあるこの子にでも頼もうと思ったんだけど……。」
それが僕に丸投げされたのか。店長は必死に顔を逸らしてコップを拭いている。
この人には素人のお茶を飲ませた負い目と、伝わってくる良い人そうな雰囲気が。
僕に拒否権の行使を渋らせる。その結果。
「その人の家って何処にあるんですか?」
何て時間稼ぎの言葉が出て来てしまった。
話を聞けば断れるのか? 多分それは無理だ。
女性客から詳しい話を聞いた僕は、負い目から頼み事も断り辛く、更には。
『あの子より貴方の方が私も安心出来そう。』何て言われてしまった。
結局僕は断る事が出来ず、頼み事を引き受ける事に。
負い目もそうなのだが、頼み事を持って来たこの人。名前は確か小夜さん、
だったか。
この人は話す物腰が柔らかく、言葉の節々には此方への気遣いまで感じる。
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