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小夜さんは小さく笑っては前を向き直し。
「それもそうね。ああ、でもそうなら。
君は頼み事を断れない。断った事が無い人なのかもね。
自分よりも他人を優先してしまう。」
『そんな人って偶に居るでしょ?』っと続ける小夜さん。
違う。とは答えられなかった。何故なら、
頼み事を断った記憶が直ぐに見付からなかったからだ。
そもそも僕は人に何かを頼まれる事が稀で、
稀だからこそ特に断らなかっただけ。
嫌な物は嫌だと何時だって断れる。だけど。
何故か僕は“断れる。”と、強い自信は持てなかった。
僕は自分よりも他人を優先していたのだろうか……。
そんな事をぼんやり考えていると。
「後はこの道を真っ直ぐ行くだけね。
表札には『深見』って書かれてる家なんだけど。
ちょっと大きな家だから見逃す事は無いと思うわ。」
気が付くと小夜さんは既に立ち止まっていて、一歩ほど後ろに居た。
僕は後ろの小夜さんへと振り返る。
「本当にごめんなさいね。
仕事が抜けられそうなら私も手伝いに戻るから。
ああそれと、手伝いはあの喫茶店からと言ってもらえる?」
「え? それは別に構いませんが……。」
実際喫茶店からの手伝いだ。それを誇張する意味とは何だろう。
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