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「結構遠慮がちな人だから、ただの手伝いではきっと追い返してしまうわ。
でもあの店長からの手伝いだと言えば、きっと遠慮もなさらない。
それだけの貸しがあの子にはあるからね。」
遠慮がちな人も遠慮しないほどの貸し。
あの店長は周りにどれだけ貸しを作っているのだろう?
僕が疑問に思っていると。
「そんな大きな貸しは私と其処の家主だけよ。
あの子もそれ程駄目な子じゃないのよ? ふふ。」
僕の顔に疑問の表情が出ていたのか、
困り顔の小夜さんが店長を庇う様に話す。
そう言えばこの人と店長の関係も分からない。友達とかかな?
もっと言えば何故そのお婆さんの手伝いを、この人が誰かに頼むのかも謎だ。
だけどまあ。そのどれも僕が分かる必要は無いかな。
「分かりました。店長からの使いと話せば良いんですね?」
「……ええ。お願い。」
小夜さんは何故か少しの間を僕を見詰め、
お辞儀をするともと来た道を真っ直ぐ戻って行く。
多分これから仕事に向かうのだろう。
僕は姿が見えなくなるまで見送る事はせず、
言われた通りの家を探して前を歩き出す───
───暫く歩き続けていると長い塀が現れ。
「『ちょっと。』かなぁこれは。」
連続していた塀の切れ目。門扉の前に立ち、思わず呟いた。
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