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開いた門から見える中には古風な日本家屋が見えて、
それは屋敷と呼んだ方がしっくり来る代物だ。
立派な日本屋敷の姿に思わず、こんな建物が地元にあるのか。と見惚れてしまう。
何よりこの門扉。高いなぁ……。
「あの、家に何か御用でしょうか?」
僕は“ハッ”として見上げていた視線を下ろす。
視線を下ろした先には。
紫陽花が控えめに刺繍された羽織を着た、品のある婦人が。
不思議そうな表情で僕を見ていた。その僕は表情に少し慌て。
「喫茶店からの掃除で手伝いに来ました。」
思わずちぐはぐな日本語で喋ってしまう。
これじゃ意味不明だ。羞恥で少し顔が熱くなるのを感じながら、
言い直そうとして気が付く。僕は喫茶店の名前を知らない。
いや、多分見たけど覚えてない。
店の扉に何事か書いてあったはずだと、僕は思い出そうとするが。
店長が隠し扉から出てくる姿が浮かんでは邪魔をする。
想像の中の店長は大変良い笑顔で、少しだけイラつく。じゃない。
このままでは僕は不審者のままで終わってしまう!
「あら? 泉ちゃんの所の?」
どうやら先程の怪しい日本語で伝わったらしい。奇跡だ。
とも思ったが、喫茶店をやっている知り合いなんて早々居ないだろうし。
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