第一話 第三章

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 “ガガガタン”と言う音が聞こえ、微かに差し込んでいた出入り口の光が消える。  まさかと思いながら伸ばした体をゆっくりと戻し、出口の方向へ顔を向けるが。  真っ暗な空間が広がるばかりで、差し込む光は何処へやら。 「(風か?)」  この蔵の扉は二重構造で、石材で出来ているらしい重い二枚扉と、木製の扉が一枚。  深見さんはお年らしく重い方の扉は常時開けっ放しらしい。  実際此処に入る時も重そうな二枚扉は全開だった。なので、閉じたのは木製扉一枚だろう。  だから僕は“閉じ込められた!”なんて取り乱したりもせず。  手にしていた懐中電灯のスイッチをオンに。そしてその光で足元を照らし、  物を壊さにように気を付けながら出入り口へと向かう。  蔵の出入り口に着くと予想通り木製扉が閉まっていただけだった。  正直に話せば、この状況にちょっとだけ驚いた。だけど現実はこんな程度。  僕は小さく鼻で笑い。扉を押し開───けない。 「?」  思いの外重たいのかと、扉を強く押すも開かない。  もう一度強く押すがやっぱり開かない。 「??」  今度は引いて見るが開かず。押す、引くと試しても開かない。 「???」  押しては引いて、また押しては引いて。若干乱暴に成りながら  前後左右に押し引きを繰り返すも。     
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