第一話 第三章

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 扉は“ガタガタ”と音を立てるだけで一向に開かない。これはつまり。 「閉じ込められた!」  思わず大きな声を出してしまう。いや、それもこの状況なら当然だよ。  何せこんな蔵の中に閉じ込められたのだから。  僕は扉を“ガンガン”と叩きながら。 「深見さん! 蔵に閉じ込められましたー! 深見さーん!」  助けを求めて叫んで見るが応答は無い。深見さんは母屋で此処は蔵。  距離的に声は届かないのだろうと思ったけど、やっぱりだった。  僕は扉に背を預け、ずるずると座り込み。 「はぁ……。」  溜息を一つ吐き出す。困った事態だが、まあ何とか成るだろうと、僕は楽観視していた。  僕が蔵に居るのは深見さんも知っている事で、  何時までも戻らないと成れば様子を見に来てくれる事だろう。  そこで深見さんに助けを呼んでもらえば良いだけ。  それが何時に成るかは分からないが、幸いな事に蔵の中は蒸し風呂って訳でもないで、  この中で脱水で倒れる事は今の所無さそうだ。  後は暇な時間を過ごし、大勢の大人に大丈夫かと言われながら蔵の外に出る。  その時を待つだけ。  閉じ込められた事に緊張もしたが、どんな状況でも人間は成れてくるらしく。  少し立つと緊張感も次第に薄れていった。     
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