第一話 第三章

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 手に持つ懐中電灯の光はそこそこ明るく、僕は大分冷静に。  そして蔵の中の涼しさが何だか心地よくて。疲労感から眠気が押し寄せてくる。  流石にこの状況で寝るのは不味い。そう思うと眠気が増す。 「(うおお寝るなー。)」  等と頭の中で叫ぶも頭はユラユラと揺れ。眠気が執拗に纏わり付く。  もういっそ寝てしまおう。僕が疲労感と眠気に白旗を上げようとした時。  “カタン…。”っと、蔵の何処かから物音が響く。 「!」  物音を聞いた瞬間眠気は消し飛び、代わりとばかりに緊張感がこみ上げてくる。  僕は閉じ掛けていた目を見開き耳を欹てる。すると。  “カタタ”と。また蔵の何処かからか音が聞こえる。  どうやら寝ぼけ眼の幻聴では無さそうだ。僕としては幻聴であって欲しかったけど。  隙間風の悪戯。そうも思ったが“カタタ、タタ…。”と。正確な場所は分からないが、  物音はどうやら移動している様子なのだ。つまり隙間風の悪戯じゃない。  風じゃないなら生き物? そう思うと、頭が勝手に物音の正体を想像しだす。  ネズミ、嫌だ。黒いアイツ、もっと嫌だ。どちらでも無い何か、それも困る!  嫌な想像が頭を巡る内に、何処か移動していた物音が一つ所に留まり。     
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