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それを確かめるために、伸ばした右手からゆっくりと左手で懐中電灯を受け取り。
右手へと向ける。
「……布?」
右手に引っ掛かっていた物は布。そう、ただの布だった。
布を手にして広げ見るも、奇妙な刺繍が施されてはいるが、間違いなくただの布だ。
何でこれが上から? そんな疑問と共に懐中電灯と共に視線を上に向ける。
だが上には特に何も無い。それが分かった瞬間手にしていた懐中電灯の光が突然消えた。
何事かと懐中電灯のスイッチをカチカチしたり、振ったり───してる余裕は無い。
光が消えた瞬間から、僕の隣にはナニカが居る。
梯子しか無いはずのその場所に、絶対にナニカが居る。
息遣い何て聞こえない。物音一つ所か梯子だけのその場所。なのに、
直ぐ隣に気配があって、僕の右半身の全てがざわついて止まない。
瞬きも呼吸も怖くて出来ない。それしたら、止まない嫌悪感が実体と成って僕へ触れる。
そんな脅迫的な想像が頭いっぱいに溢れて、これ以上は限界だと思った瞬間。
“タタ”と、あの音が何処かから聞こえた。
「!!!」
僕はそれを合図とばかりに全力で出入り口へと走り出した。
まだ動けた自分を、取り乱さなかった自分を心から褒め称えながら、
明かりも無しに蔵の中を走る。
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