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「……それが良い。」
言いながら男の子の頭の上に手を軽く乗せ、少しだけ擦る。
手を退けるとずれた帽子を男の子が直している。
男の子から視線を外し、目を閉じる。
果たして僕のアドバイスは正しかったのだろうか?
無責任に適当な事を言ってしまったのだけでは無いだろうか?
素直。それは僕には難しい物で、誰にだって難しい物だと思う。
もしかしたら、間違った事を言ってしまったかも。
吐いた言葉に自信が持てない。
ただ。嘘を言った積りだけは無い。それだけは確かだ。
僕だってそれが分かる程度には大人で。正しいかが分からない程度には子供なんだよ。
目閉じて一人吐いた言葉の重みを考えていると。
“ガサ…。”何て音が耳に届き。目を開ける。
右に座った男の子を見ると、怯えた表情で遠くの茂みを見詰めていた。
僕も男の子が見詰める茂みを凝視する。僅かにも揺れていない茂み。
すっかり忘れていた事だけど。僕が見た、と思っていた少年は誰だったのだろう?
この山には危ない生き物が居た。何て話は聞いた事が無い。
「あのね。」
隣の男の子が小さな声で話し掛けてくる。
「ぼく、お花を探してる時に、何かに見られてる気がしたんだ。」
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