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男の子は茂みから目を離さずに話す。
「ずっとずっと何か見られてる気がしたんだ。
もしかした怖いクマかライオンかもって。
そう思ったらすごく怖くなって。夢中で走って、木に登って……。」
男の子は話し終わると、僕の片腕を両手で握りしめる。
自分の話に更に怯えた様子の男の子見て、何で今その話を改めてしたのかと思う。
恐怖を煽る演出を無意識にした男の子を見ながら、僕も頭で考える。
この山に熊が居たとは聞いた事が無い。熊以外の危険動物だって聞いた事が無い。
ただ、居ないとも聞いた事が無いと、僕は気が付いた。
いけない。どうやら僕も自分で恐怖を煽ってしまったらしい。
変な事を考えた所為で、先程から寒気の様な物を感じ始めているのだから。
男の子から視線を茂みへと移す。茂みは未だ静かなまま。
だが其処にはナニカの気配を感じる。自分で煽った恐怖心の所為で、そう感じてしまうだけ。
だと言うのに何だろうか。ナニカの気配は気の所為だと、そう言って茂みから目が離せない。
見通せない茂みの向こう。今にも其処から何かが……。何かが這い出て来そうな……。
「こっちだよ!」
「「!」」
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