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僕は立ち上がって振り返る。茂みが目に見えて揺れ動いているのが分かる。
そればかりか。“ガササササッ!”茂みの中を何かが通って来ている!
僕は男の子を背に隠す。正直今出来る事などこれぐらいだ。
足は限界でもう抱えて走るなんて出来ない。
やがて茂みの音がどんどんと近付いて来て───
「ぶわっはっ!」
茂みかき分けて出てくると同時に叫んだその人は。
「店長!」
「マ・ス・タァー!」
身体に付いた葉を払い除けながら、店長は此方に近付き。
「もー。言ってた場所には居ないし。見付けたと思ったら茂みに走り込むし。
一体全体どうしたんです? 青春ですか?青春が君を狂わせたんですか?」
「そ、れはその……。」
「?」
恐ろしいナニカに追われた気がして逃げてました。とは言えない。
暑さで頭がおかしく成ったと思われるかも知れない。僕ならそう思うし……。
茂みに駆け込んだ訳をそうして思い出していると。
ナニカに追われた気がして逃げていた時。最後、茂みに駆け込む瞬間に聞いた声。
あれはもしかして。
「あの。もしかして『待て』って店長が叫びました?」
「叫びましたけど?」
返事を聞いて肩の力が一気に抜ける。どうやら追い掛けて来ていてのは店長だったらしい。
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