0人が本棚に入れています
本棚に追加
後ろでしがみ付いて居た男の子からも、ホッとした気配が伝わってくる。
僕と男の子は二人して安堵の溜息を漏らす。
安堵する僕たちの事を不思議がって見る店長へ。
「いやその。実は危ない野生動物にでも追われてると思って逃げてたんです。」
「こんな綺麗なお姉さんがそんな訳は無いでしょうに。全く!」
店長はブツブツと文句を口にしている。
本当はもっと危険な、言葉で言い表せないナニカだと思ったけど。
それは言わずに置いた方が良いだろうね。
実際暑さと心細さからそう思っただけみたいだし。
僕がそう納得していると、文句を言っていた店長が。
「それにですよ? この山にそんな危ない生き物が居たなんて、
マスターの私は聞いた事も無いですからね。」
「それは僕も同じですよ。でも、居ない。
とも聞いた事が無いなって考えたら。ちょっとだけ怖くて。」
僕がそう話すと、店長の顔が曇る。
あ。店長も居ないとは聞いた事ないんだな。
「……とーり敢えず山を下りよう。うん、下りよう。」
「って言っても僕は帰り道分かりませんよ。」
「ぼ、ぼくも。」
隣を見るとケン君が手を上げて答えていた。
そんな僕らを見た店長は。
「大丈夫大丈夫。この地蔵があるって事は───あっちが帰り道ね。」
最初のコメントを投稿しよう!