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出た場所が出入り口に近かったのか、それ程時間も掛からずに山の出入り口へと辿り着けた。
と。その出入り口には人影が二つ見える。一つは髪ゴムを着けた女の子。
もう一つは、サンダルにエプロン姿で、酷く心配した様子の大人の女性。あれは恐らく。
「ケン!」
「お、お母さん!」
僕の予想通りケン君のお母さんだった。
此方に駆け寄ってくる女性。彼女を見ながら隣の店長へ。
「親御さんをちゃんと呼んでたんですね。」
「そりゃあ勿論呼ぶさ。
だって君、子を叱るのは親が最も適任でしょう?」
最もだ。そう思いながら、自分の足にしがみ付く男の子の背を押す。
男の子は此方を見上げてはこの世の終わりの様な表情を浮かべている。
「(そんな大袈裟な……。)」
でもごめんよ。僕は君を親から庇う術をまだ知らないんだ。
男の子の必死の抵抗虚しく。僕の手で男の子はお母さんの前に一歩押し出される。
叱られると思ったらしい男の子はギュッと目を瞑り。そんな男の子を見た母親らしき女性は。
「───」
怒りや心配と言った表情が目まぐるしく浮かんだかと思えば。
「どこも怪我はない?」
「……うん。」
母親は優しい声でそう男の子に話し掛け。
「良かった。すっごく心配したのよ?」
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