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屈み込んでは男の子をそっと抱きしめた。母親の顔には安堵した表情だけが浮かんでいる。
抱きしめられた男の子も母親を抱き返し、そして大きく泣き始めてしまった。
男の子は怖かった事やら何やらを。嗚咽混じり大声で話しながら泣いている。
ああ。別に強い子って訳じゃなかった。ただ必死に頑張って耐えていただけで───
其処まで考えて僕は一度頭を振り。
「(いや。あの子はやっぱり強い子だ。)」
男の子は一頻り大泣きすると。目を両手で拭って。
隣に居た女の子へ向き直り。
「せっかく作ったお城をこわしちゃってごめんね。ハルちゃん。
ゆるしてくれる……?」
「もちろん。またいっしょにお城を作ろ。」
「うん! あ、そうだあの後シュウくんたちと仲直りしてね───」
ケン君はハルちゃんへお城を作り直した事を伝えている。
僕はあんなに素直には謝れないだろうなぁ。そんな事を考えながらぼんやり眺めていると。
母親らしき女性が此方に近付き。
「ケンを見付けてくれてありがとうございます。」
深々と僕と店長へ頭を下げて来た。その姿や、その言葉を受ける事が
何とも言えない感覚で。
「いえ。見付かって良かったです。
って言っても僕もまあ結局一緒に迷っただけですから。
お礼なら僕らを見付けて、山から下ろしてくれた店長へ。」
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