第三話 第三章

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 清掃に使っていたモップに手を重ねて置き、更にその上に顎を乗せ。  ぼーっと思いを巡らせる。 「黄昏中?」  何時の間にか二階から下りて来た店長が、そう僕へ声を掛けて来た。  寝起き感の漂う店長はそのままカウンター席へと座る。  僕もモップを片付け、カウンター裏に回っては手を洗いながら。 「ちょっと知り合いの事を考えてました。」 「んー。」  店長はカウンターテーブルに頭を預け、応える。  コップに飲み物を注ぎながら。ふと、店長へ尋ねる。 「店長。この喫茶店に女学生が来た事ってあります?」 「んー?」  顔を上げた店長は目も開けずに唸り。  そしてまたカウンターテーブルへと顔を沈めた。  この様子だと覚えてないか、そもそも来てないか、かな?  店長の顔の横に飲み物を置き。洗い物をしながら。  来たかどうか分からない彼女の事を思い出す。何処か品があり、物怖じしない態度。  長めの髪が似合っていて。 「綺麗な子だったなぁ……。」  あれは幽霊だったのか。はたまた別の何かか。  もう会えないだろう誰かの事を、僕は少しだけ惜しんだ。  名前も知らぬ誰か、もう会えないであろう誰か───
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