一章

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一章

指先にひっかけたストラップは、写真集で見た海をイメージして作ったものだ。波のようになった所、貝殻を模した金属。雫の形をしたフレームの中に、自分の思い描いたものを閉じ込めることができた。 水色のラメが太陽の光を受けて反射し、様々な色に変化する。このストラップは、UVレジンという、紫外線で固まる物質でできている。昨日の夜、眠い目をこすりながら遅くまで起きて作った。 「このあたりのグラデーション、綺麗にできてよかったな」 やっぱり、お昼の光はとてもいい。柔らかくて暖かくて、眩しい。思わず独り言を言ってしまうほど、このストラップをきらきらと輝かせてくれる。 嬉しくなってポケットからスマホを取り出し、持ってきた小さなファイルから、ストラップの色に合いそうな紙を探す。このファイルには、色々な質感の紙が入っている。英字新聞っぽいものや、クラフト紙、和紙っぽいものからレースコースターまで。こつこつと百円ショップで買い集めたものだ。 青だから、ちょっと薄めの水色にしようか、それとも冒険して、暖色にするとか。選んで、載せて、選んで、載せて。
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