15人が本棚に入れています
本棚に追加
/435ページ
1 潜入《ダイブ》
音声の感知レベルを人間並にすると、とたんに自然界のあらゆるものが神秘的な響きを持ち始める。
海中は静かで、荘厳だ。潮流が低く響くのは、かすかな脈動に包まれているようで心地よい。単独任務を嫌がる同僚もいるが、私はちがう。ギムナジウムを卒業して任務に就くようになってからというもの、ひとりの時間の重要性は日増しに強くなっていく。
私の意識は小型の球体アバター――通称・ウイング――に憑依し、薄緑色の海中を航行している。センサーと特殊能力のつまった感覚のみの存在となって、およそ三〇〇メートル先を漂う生物の一群を監視している。
――レイファ、調子はどう?
別のウイングで航行中のモニカから通信が届いた。同じ時間帯に勤務するのはめずらしい。彼女の映像が視界に浮かぶ。見慣れた童顔の親友はいつもの白猫を抱いている。
私は航行速度を調整しながら、彼女に返信する。
――順調だよ。テラは26体全員、エリア5749を無事に遊泳中。
――そう。私はこれから上がるわ。ところで、座標345、560、332のあたりは濃度が希薄だから注意して。
――ありがと。
――じゃあね、また明日。
最初のコメントを投稿しよう!