おもちゃの国

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「行くわよ。一、二の三!」  メヌが音がするほど強く木の皮でできた屋根を踏み切る。同時にふわりと大きな籠に大きな白い翼のついた不思議な乗り物の翼が風を掴んだのを感じた。風に乗って遠くまで飛ぶことができるらしい。  高い高度を保ったまま、二人の乗った籠は空を渡っていく。下を見ると、今まで歩いてきた森や土手、さらには長い長いレンガ道が見えた。視線をそらせばその道に沿って水飴の川も流れていて相変わらずてらてらと七色に光っている。あまりに小さくてわからなかったが、目を凝らせば水飴の川の河原をあのブリキ兵たちが隊列を乱さず見回っていた。空の移動は早く、それらを見ているとあっという間に最初にいた場所までやってきた。 「着いたわよ。あと問題なのは、ここからよ」 「どうやって行くの?」  底を大胆に地にこする豪快な着地の後にメヌが言った。 「あなたはここからまっすぐ空を昇って行けばいいの。けれど、おそらく途中でブリキ兵が見回りにやってくるわ」  それで見つかってしまえば、あなたの国に帰ることはできないとメヌは言う。  彼女が言いながら手のひらの上に出したのは小さな風船で、膨らませれば大きくなってゆう一人くらいは軽く乗れるようになるらしい。しかしこの風船は誰かに見つかるとその効力を失い、地に落ちてしまうのだという。大きいのでブリキ兵には簡単に見つかってしまうのだ。 「けれど、あなたは空が夕暮れである時しか帰れない。この国の天気は不規則で次はいつ帰れるかわからない」  メヌは諭すような声音でまっすぐにこちらの目を見る。 「だから賭けるのよ。帰れることに。信じれば必ず運はついてくるもの」  メヌは手のひらの風船の口を広げて風をくるんだ。一瞬にして大きく膨らんだ風船は、本当に大きくて直径が身長の倍はあった。そこにメヌはゆうのわきの下を支えて風船の上に乗せてくれた。そうすればゆうの目線はメヌのそれを越えた。
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