おもちゃの国

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「……?」  いつの間に眠ってしまっていたのか、寝心地の悪さにふと目を覚ましてみれば、自分は見知らぬ道のど真ん中にごろりと寝転がっていた。赤茶色のレンガが敷き詰められた道は夕焼けの先へと延々続いている。どちらも赤いものだから、境がぼやけてはっきりと見えない。  理解すると急激に降りてきた不安にどうしようもなくなって押し潰されそうになる。 「おかあさん……」  嫌な予感の通り、呼びかけても母からの返事はない。しかし先ほどのやり取りで怒った母が、自分を無視しているのかもしれない。そう思うと、さっきの訳のわからない不安よりももっとずっと大きな不安が悲しさと共に心に差した。  その途端、さっきまで綺麗な夕焼けだった空が見る間に雲に覆われていく。どんよりと冷たく暗い灰色をしたそれは、ずんと暗くまるで迫ってくる屋根のようにこちらに近付いてきた。 「お、おかあさあんっ! おかあさん!」  泣きながら叫んでも母からの返事はない。  ふと空を見上げれば、雲はとてつもなく大きくなって随分と接近していた。後もう少し降りてくればジャンプしただけで手が届きそうだ。     
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