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それでものどが渇いて仕方のなかったゆうは、ためらいもなく川に幼い手を突っ込み、お椀のように丸めた手で水をすくい上げた。手からとろりと零れ落ちてくのは明らかにただの水ではなかったが、それに口をつけてずるずるとすすった。
口の中に胸やけしそうなほどの甘さが広がる、まさしくそれは水飴だった。乾いていた喉には堪えられるものではなく、川に口の中の水飴を吐き出してしまった。
とぷんとぷんと重く落ちる水飴を見ながら呆然としていると、遠くの方で一際大きくどぷんと音がした。慌てて顔を上げた時には、うねうねと波打つ波紋しかなかったがどうやらそれはこの川に棲む魚のたてたもののようだった。そしてさらにもう一度、今度は見ている前で七色の魚が飛び上がった。赤い夕陽を受けててらりと光る魚は、丸い目でこちらを見ながら水飴の川の中に戻った。
七色の魚と目が合ったとき、わけもなく背をぞくりとしたものが駆け抜けた。
何かに追い立てられるように口の中の水飴を吐き出した。土手まで走り寄って、自生していたよく分からない葉の広い草をちぎって口の中を丁寧に拭っていった。
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