いばら姫は、森の奥。

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そんなこともあり、帰路についた琴音(ことね)は急激な睡魔(すいま)に襲われ、あっけなく意識を手放してしまった。 後輩を自分のトラブルに巻き込んだ挙句(あげく)、彼が運転する隣の席で寝てしまった。 先輩として、いや大人としてどうなのよ、私。 でも、“あの日”のことが気になって、寝不足だったっていうこともあるし……。 「なに百面相(ひゃくめんそう)しているんですか?」 「……保志(ほし)くんが中型免許を持っていて助かったな、と思って」 いま、そんな顔してましたっけ? と保志は苦笑する。 「お役に立ててなによりです。今回みたいなことがあったときに、自分が動けた方がなにかと便利だなって思って、免許取ったんですよ」 入社二年目の言うこととは思えない。 琴音は当時の自分を思い起こし、ため息をついた。 先輩社員についてまわり、日々の業務を消化することが精一杯だった私とは雲泥(うんでい)の差だ。
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