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「オレは、車を会社に置いてから帰るんで、茨木さんは直帰してください」
無事に納品を終え、帰社しようとトラックに乗り込もうとした琴音を保志が呼び止める。
魅力的な提案だけど、と琴音は苦笑を浮かべた。
「残務処理があるから、私も会社に戻るわ」
「急ぎの用件じゃないですよね? 今回、結構な強行軍だったんで、四宮課長からも茨木さんを直帰させるように言われてるんです」
一緒に帰社したら、オレが叱られます、と保志は肩をすくめる。
「それに」
スッと伸びた右手が琴音の頬を包む。そして、琴音の目元を、愛しげに親指の腹で撫でた。
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