いばら姫は、森の奥。

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********** 「オレは、車を会社に置いてから帰るんで、茨木(いばらき)さんは直帰してください」 無事に納品を終え、帰社しようとトラックに乗り込もうとした琴音(ことね)保志(ほし)が呼び止める。 魅力的な提案だけど、と琴音は苦笑を浮かべた。 「残務処理があるから、私も会社に戻るわ」 「急ぎの用件じゃないですよね? 今回、結構な強行軍だったんで、四宮(しのみや)課長からも茨木(いばらき)さんを直帰させるように言われてるんです」 一緒に帰社したら、オレが叱られます、と保志は肩をすくめる。 「それに」 スッと伸びた右手が琴音の頬を包む。そして、琴音の目元を、(いと)しげに親指の腹で撫でた。
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