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「なんも知らんようで、いっちゃん大事なことは、よお知っとる」
そう言って、琴音の眼前になにかを差し出した。反射的に受け取ったものの、それがなにか瞬時にわからない。
「いま見してくれたんを、大阪におる、うちの若いんに見せたって」
西野がえらい熱心にアンタに会って欲しい言うてたんがわかったわ、と豪快に笑う。
「ちょ、会長、ここにおったんですか!? えらい探しましたよ」
スーツを着た秘書然とした男が、肩で息をしながら大河に駆け寄る。「お、すまん、すまん」とまったく悪びれる様子もなく、大河が男の肩を叩いた。
「ほな、茨木さん。今度は大阪で」
小さな子どものようにニイッと笑って、大河は去っていった。
ブースにひとり取り残された琴音は、なにが起こったのかわからず、呆然と立ち尽くしていた。
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