森の奥には、ふたりの王子。

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「……なにをしているの?」 背後から聞こえた硬質(こうしつ)な女性の声色(こわいろ)に、ふたりは慌てて振り返った。 出先から戻ったばかりなのか、カバンとグレイのテーラードジャケットを持った茨木(いばらき)琴音(ことね)が、怪訝(けげん)そうな顔つきでこちらを見ていた。 「お疲れさまです、茨木さん!」 三井が立ち上がって挨拶するので、旺佑(おうすけ)もその後に続いて立ち上がり「お疲れさまです」と頭を下げた。 新入社員が先輩の企画書に難癖(なんくせ)をつけている場面を見られた気まずさと、先ほどの“いばら姫”の件を思い起こし、なんとも言い難い微妙な空気になる。
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