眠る姫君に、くちづける王子。

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今朝ほどの紳士的な態度はどこへいったのか、と琴音(ことね)は思わず半眼(はんがん)になった。 「いや、鬼原(きはら)。危ないだろ……」 「大丈夫だって。なぁ、茨木(いばらき)?」 と流し目で見られたら、「大丈夫」としか答えようがない。もともと辞退するつもりだったので、なにも問題はないのだが。 「ホテル、ここからそんなに遠くないので、心配しないでください。それよりも……」 明日は大河(おおかわ)会長にアポイントをいただいていることを忘れないでくださいね、と念押ししておく。 このふたりには、釈迦(しゃか)説法(せっぽう)というやつかもしれないが。 「それでは、お疲れさまでした」 そう言って、久弥たちを送り出した琴音(ことね)だが、その数分後には大きな後悔をすることになった。 ──酔いが、足にきた。
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