眠る姫君に、くちづける王子。

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「強気の美人って、オレ、めっちゃ好き」 そう言って、もうひとりの男に目配(めくば)せをする。危険な予感が背筋を走った。 「離して、ください」 「だーめッ」 思うように力が入らない身体を懸命に反らして、助けを求めようと声をあげようとした刹那(せつな)、背後から抱きかかえられるように腕が回された。 ──さわやかな柑橘系の香りがした。 「この女性(ひと)、オレのだから」 そう言って、声の主は、琴音(ことね)の腕を(つか)んでいた男の手を(ひね)りあげる。くぐもった声が、男に口からこぼれた。 「手を出さないで」 琴音の身体をしっかり後ろから抱きしめて、低い声でささやく。威嚇(いかく)するようなその響きに、男たちは一瞬ポカンとしたあと、顔をみるみる赤く染めた。
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