眠る姫君に、くちづける王子。

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「おい、お前、なにイキってんねん」 今にも殴りかかりそうな勢いで、男たちがつめ寄ろうした瞬間、「おまわりさ〜んッ! こっちですよ〜」という女性の声が響いた。 「げっ!? ヤバッ!!」 男たちは、赤くなった顔を瞬時に青く染めて、脱兎(だっと)のごとく、その場を後にする。何事かと遠巻きに状況を眺めていた通行人たちも、ひとり、またひとりと雑踏の中に消えていった。 「保志(ほし)くん、なんで大阪(ここ)にいるの……?」 「開口一番、そこなんですか?」 背中から聞こえてくる(あき)れたような声。首筋にかかる吐息に、先ほどとは明らかに違うゾワゾワとした感覚が走り抜けた。 「……仕事です」 そう答えるやいなや、保志は突き放すように距離を取った。抱きしめていた腕が(ほど)かれると、琴音(ことね)は温もりを求めて手を伸ばし、(くう)(つか)んだ。
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