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しかしながら、琴音は気が気ではなかった。
眼前では、ミユキと呼ばれた女性が、大層親しげに保志の肩を抱き、鼻先を寄せて会話をしているのだ。
ちょっと距離が近すぎるのではないだろうか。
そんなことを思うものの、口出しする理由も権利も、琴音にはないのだ。ただ、モヤモヤとした思いが胸の奥にくすぶる。
「……ミユキ、その話はもういいから。ちょっと離れろ」
顔をしかめる保志に、「照れるな照れるな」と言いながら、彼女は頭をグシャグシャと撫でた。よほど親しいのだろう、文句を言いながらも、保志は本気で抵抗する気配は感じなかった。
「とにかく、オレはホテルまで送っていくから、もうお前は帰れ」
「ダメッ!」
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