4890人が本棚に入れています
本棚に追加
思わず声が出た。訝しむような眼差しをふたりから同時に向けられた琴音は、どぎまぎして言葉に一瞬窮した。
「……その、もう夜も遅いし、ひとりで帰るのは危ないと思うわ」
「「危ないィ!?」」
素っ頓狂な声があがる。
「まあ、このご時世、色んな変わったヤツがいるから、襲われる可能性はゼロではない……」
ミユキは、神妙な面持ちで答えつつも、語尾が笑いで震えている。
「……ヤバい。ジワる」
「コイツ、空手の有段者なんで気にしないでください」
スパッと切り捨てるように言って、保志が琴音の方を向きやる。なぜだろう、少し怒っているようだ。
「そんなことより、なんで森埜常務や鬼原主任に送ってもらわなかったんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!