眠る姫君に、くちづける王子。

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「ええっと……」 責めるような保志(ほし)の視線から逃れるように、琴音(ことね)は思わず(うつむ)いた。 「大丈夫だと、思った、から……」 消え入りそうな声で答えれば、保志を取り巻く空気が、さらに寒々しくなる。 「自分の彼女ひとり送らないのかよ、アイツ」 そう言って、盛大に舌打ちをする。だれかに 向けた苛立(いらだ)ちをあらわにする保志に、琴音(ことね)は戸惑いながら尋ねた。 「……かのじょ?」 保志は一瞬しまったという表情を見せたが、逡巡(しゅんじゅん)した挙句、不承不承(ふしょうぶしょう)口を開く。 「……茨木(いばらき)さんは、常務と付き合ってるんですよね?」 ──は? ひとは、驚きすぎると声をなくすらしい。
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