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一方、ひどく真剣な表情の保志からなにかを伝えられたミユキは、少しだけ目を見開き、チラリと琴音を一瞥するなり、困ったように笑った。
「はいはい。りょーかいです」
降参とばかりに、ため息をつくミユキ。しかし、その表情は明るい。
そんな彼女に目もくれず、保志は琴音のトランクを引っ掴むと、反対の手を伸ばした。
「……琴音さん、ホテルに行きましょう」
──こんな往来で、なに言ってるの?
と絶句する琴音だが、一拍置いて「ホテルまで送ります」の言い間違いだと気づく。
なんて紛らわしい、と思いながら、心臓がドキドキした。心なしか顔も熱い。
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