眠る姫君に、くちづける王子。

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──私、保志(ほし)くんのことが……。 反射的に腕を伸ばせば、触れた指先の温かさに胸が高鳴る。かたや、琴音(ことね)の手を握った保志は、その冷えた指先に眉根を寄せた。 「まだまだ寒いですよね」 肩にかかる重みに、保志が自分の上着をかけてくれたことに気づく。 「いまは、これで我慢してください」 そう言って、今度はしっかりと手を握られた。琴音は、ブカブカの上着の(そで)(つか)んで、ふふっと笑う。 「どうかしましたか?」 怪訝(けげん)な表情を浮かべる保志に、内緒話をするように琴音がささやいた。
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