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「ごめん、なさい……」
喉の奥から絞り出すように、琴音は掠れた声でつぶやいた。
苦しげなその声に、旺佑は自分はフラれたのだと実感した。胸の奥には、消しきれない炎がゆらゆらと揺れてはいたが、それはどうしようもないと思った。
それでいて、腕の中に閉じ込めた彼女を逃がしたくなくて、未練がましく抱きしめる。
好きだ。
好きだ。
好きだ。
この想いを伝える言葉が見つからない。今さら伝えたところで、彼女にとって迷惑以外のなにものでもないだろうが。
胸の下で苦しそうに身をよじる彼女に気づき、旺佑は腕の力を緩めた。
終わったんだ、と思ったその刹那、遠慮がちに背中に腕が回される。
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