くちづける王子と、恋に落ちた。

11/41
前へ
/579ページ
次へ
「ごめん、なさい……」 (のど)の奥から絞り出すように、琴音(ことね)(かす)れた声でつぶやいた。 苦しげなその声に、旺佑(おうすけ)は自分はフラれたのだと実感した。胸の奥には、消しきれない炎がゆらゆらと揺れてはいたが、それはどうしようもないと思った。 それでいて、腕の中に閉じ込めた彼女を逃がしたくなくて、未練がましく抱きしめる。 好きだ。 好きだ。 好きだ。 この想いを伝える言葉が見つからない。今さら伝えたところで、彼女にとって迷惑以外のなにものでもないだろうが。 胸の下で苦しそうに身をよじる彼女に気づき、旺佑は腕の力を緩めた。 終わったんだ、と思ったその刹那(せつな)、遠慮がちに背中に腕が回される。
/579ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4894人が本棚に入れています
本棚に追加