くちづける王子と、恋に落ちた。

12/41
前へ
/579ページ
次へ
第三者から見れば、恋人同士が夜道で抱き合っていると見えるかもしれない。 あいにく周囲にはだれもおらず、ふたりの関係性を公言する必要もないのだが……。 ──だれか、この状況を説明してください。 フラれたと思った矢先(やさき)、なぜか意中の女性に抱きつかれているのだ。 旺佑(おうすけ)はひどく混乱していた。さっきまで琴音(ことね)を抱きしめていた両腕は、彼女に触れるか(いな)かのギリギリの距離を保ったままフリーズしている。 ど、どうすればいいんだ?? 自分が置かれた状況が分からない。 「……保志(ほし)くん、確認したいことがあります」 感情の見えない声が、胸のあたりから聞こえてくる。視線だけ動かせば、(ひたい)を旺佑の胸にぴったりとくっつけた琴音の姿が見えた。残念ながら、その表情は読み取れない。 なぜ、敬語? と思う旺佑だが、それを問うことはできず、ただ一言「はい」と答えたのだった。
/579ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4894人が本棚に入れています
本棚に追加