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第三者から見れば、恋人同士が夜道で抱き合っていると見えるかもしれない。
あいにく周囲にはだれもおらず、ふたりの関係性を公言する必要もないのだが……。
──だれか、この状況を説明してください。
フラれたと思った矢先、なぜか意中の女性に抱きつかれているのだ。
旺佑はひどく混乱していた。さっきまで琴音を抱きしめていた両腕は、彼女に触れるか否かのギリギリの距離を保ったままフリーズしている。
ど、どうすればいいんだ??
自分が置かれた状況が分からない。
「……保志くん、確認したいことがあります」
感情の見えない声が、胸のあたりから聞こえてくる。視線だけ動かせば、額を旺佑の胸にぴったりとくっつけた琴音の姿が見えた。残念ながら、その表情は読み取れない。
なぜ、敬語? と思う旺佑だが、それを問うことはできず、ただ一言「はい」と答えたのだった。
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