森の奥には、ふたりの王子。

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「今日一日、ホッチキスとシュレッダーやで!? 営業の“え”の字も経験できてへん」 いや、オレ営業希望やないけど、と補足する三井に、宮田が笑う。 「三井くんは、システム制御部希望だっけ?」 機械工学を専攻していた彼は、その経験を仕事に活かしたいと常々訴えていた。現在、(くだん)のシステム制御部に籍を置いている宮田は、「代わってあげたいわ」とぼやく。 「配属までにいろんな部署を経験するのはいいことだと思うけど、知識がない人間が専門部署に置かれる苦痛は半端ないわ」 エンジニアの先輩社員たちが、二週間なんの仕事させる? と部屋の片隅(かたすみ)で話し合う姿を目にするたび、いたたまれない気持ちになるのだ。 「そういう宮田の配属希望は?」 問われて、彼女はパッと瞳を輝かせる。よくぞ聞いてくれました! と。
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