くちづける王子と、恋に落ちた。

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「かたおもい……?」 初めて聞く言葉にように、旺佑(おうすけ)が繰り返す。しばしの沈黙のあと、琴音(ことね)は肩を(つか)まれ、引き離された。 「それを、いま聞きますッ!?」 叫ぶ旺佑と目が合った。「ええ」と答えると、彼は眉を八の字の形にして、心底困ったような表情を浮かべた。 再び、沈黙。 たっぷりと時間を置いて、旺佑は覚悟を決めたように息を吐いた。 「……入社してすぐから、ずっと片思いしてますよ」 あなたに、と(なか)ばふてくされたように答える旺佑に、琴音は目を丸くする。 「わたし……?」 「そうですよッ!」 アウトオブ眼中(がんちゅう)すぎて、何度、心が折れそうになったことか。そのくせ、無防備な姿を(さら)されて、オレの自制心はもうズタズタですよ。 叫ぶというより、吠えているようだった。 「あー、オレ、カッコわる……」
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