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はあぁぁ、と盛大にため息をつき、その場に座り込む旺佑を、琴音は信じられないものでも見るように眺めていた。
保志くんの片思いの相手は、私……?
“あの日の出来事”を思い出し、急激に恥ずかしさが込みあげてきた。顔どころか耳の先まで熱い。
──泥酔したあなたを介抱するため、ホテルの同室で一泊した“親切なひと”になりたくなかったんですよ。
あのときの言葉の意味を、いまやっと理解した。
京都の夜の乱暴なくちづけも、名古屋のホテルでの一夜も、つまりは、そういうことらしい。
「……ッ!?」
つい数時間前に自覚した恋心にとって、これは大変難易度の高い案件だった。
うれしさと、恥ずかしさの相乗効果で、処理が追いつかない。
ただ、ひとつだけ。ひとつだけ、わかったことがある。
──両思いなんだ、私たちは……。
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